日本政府は2025年10月13日現在、外国人の土地購入に関する規制を強化する方向で動いている。読売新聞による報道によれば、カナダ、ドイツ、韓国、台湾といった諸外国の法規制を調査し、その結果を踏まえて国内法の見直しを検討する方針である。
この動きの背景には、2022年施行の「重要土地等調査・規制法」がある。同法は、安全保障上重要な土地(自衛隊施設周辺など)の売買について事前届け出を義務付けるもので、外国人による取引そのものは禁止していない。政府は同法の施行5年後の見直し規定を活用し、海外事例を参考に規制強化を検討することで、住宅地、農地、商業用地など不動産全般への規制を視野に入れている。
国会発言から読み解く政策の深層
自民党新総裁の高市早苗氏は、10月中旬召集の臨時国会で、新首相に指名されれば、日本初の女性首相になる見通しとなっている。
高市氏は実は不動産に対する外資規制の支持者としても知られてる。過去に国務大臣も務めた高市氏は、2011年以来、外資による土地買収規制に取り組んできた経緯を繰り返し発言している(2023年1月31日、衆議院予算委員会など)。しかし、その発言の度に、国際約束、特にWTOのGATS(サービス貿易一般協定)の「内国民待遇義務」が大きな壁となってきたことを明らかにしている。
GATSは、日本が土地取引分野で留保(規制する権利)を設けずに入っているため、原則として外国人と日本人の土地取得に関して差別的な立法を行うことが認められないという構造的制約がある。 「残念ながら、過去の国際約束のうち、特にGATSですね、これで、サービスの貿易や投資活動については、いわゆる内国民待遇の義務が規定されていて、土地取得に関して内外差別的な立法を行うこと、また相互主義的な措置を取ることも原則として認められないということでございます。」と、2024年2月16日に衆議院内閣委員会で高市氏は発言している。
この発言から読み取れるのは、「取得の規制」(外国人による取得を禁止・制限する)は国際法上困難であるという認識が政府内に深く根付いていることだ。したがって、今回の海外調査に基づく規制強化は、以下のいずれかの方向を目指す可能性が高い。
「利用規制」の強化・拡大:既存の重要土地等調査法と同様、所有者・国籍を問わず「機能阻害行為」を防止するための利用規制を、重要土地以外の一般不動産にまで拡大する。
「間接的規制」の導入:取得時や保有時に、外国人または外国法人に対して、内国民待遇に抵触しない範囲で、より重い税制や届出・審査を課す。調査対象国のカナダや韓国も、取得税等で間接的な優遇・規制を行っている例がある。
「国際約束の見直し」への布石:政策の議論を深めることで、将来的なGATS等の国際約束の改正、または土地取得に関する留保設定交渉の材料とする。
市場への影響分析
規制強化は、純粋な投機目的で日本の土地を購入していた外国資本の動きを鈍化させる可能性がある。特に、ニセコ、白馬、沖縄などのリゾート地や、都心の商業地の一部で顕著だった急激な価格高騰を抑制する要因となり得る。しかし、現行法制下で「取得規制」が困難である以上、市場全体のファンダメンタルズ(低金利、円安、国内の需給)に与える影響は限定的とみる。